Japanische Fichte-Gesellschaft
日本フィヒテ協会


日本フィヒテ協会賞



【日本フィヒテ協会研究奨励賞(第一部門)】

玉田龍太朗氏

――受賞対象著作――
  • 『フィヒテのイエーナ期哲学の研究』(晃洋書房、2014年)
――受賞理由――
 玉田龍太朗氏の『フィヒテのイェーナ期哲学の研究』は、1999年から2004年にかけて発表したフィヒテのイェーナ期の実践哲学に関する六つの論文を一書にまとめたものであり、長年の研究の結晶として、単発的な作品を超えた価値がある。特にフィヒテの「感情」、「衝動」、「身体」における観念的な要素と実在的な要紫との二重性ないし交互関係において、フィヒテ哲学の根本的特徴である「理性的存在の有限性」が示されているという理解は明確であり、首尾一貫している。
 本書は、フィヒテ知識学にとって根本的な問題に取り組んだ著作としても評価できる。すなわち、物自体を想定せずに必然性の感情を伴う表象の成立をどう説明するかという問題、換言すれば、絶対的な自我の無制約性と有限な自我の必然的な制約性の関係の問題である。本書は、フィヒテのイエーナ期の主要著作(『知識学の概念』『全知識学の基礎』『知識学への第一序論」『第二序論』『自然法論』『道徳論』『新たな方法による知識学』)の詳細な読解に基づいて、この問題を究明している。特に著者が、フィヒテ哲学の実践的部門に着目し、「感情」や「衝動」を研究したことは、フィヒテ自身の見解に即しても正当なことである。玉田氏はこのような重要な論点を丁寧にフォローし、フィヒテの立場の微妙な変化も押えながら解明しようとしており、その成果は研究奨励賞に値する。